あさきすとの日常

28歳の徒然なる日記

自作小説 PART1

 夢を見ました。お城に住んでいる夢。山の頂上にそびえ立つ城で、周りの山景を上から一望できるノイシュヴァンシュタイン城のような城。そこに僕は一人で暮らしている。周りからは頭のおかしな人、と認定され自分でもそんな自分を受け入れてしまっている。孤独感すら今の自分は愛おしい。たまに自分の状況を視察しようと人間がやって来る。何かお目当てがあるのだろう。過去、自分と似たような人間が住んでいたみたいだ。たまにこの城で顔会わすことがある。自分一人しか住んでいないのにも関わらず、変な話だ。タバコを吸うときだけが孤独感を癒せる。お気に入りのタバコスポットは、裏口。白い階段になっていて、気を付けないといけない。なぜならそこは、塀がないから。緊張感がある中でする一服ほど美味しく感じるのは、きっと自分がタバコの中毒者だからに違いない。

 今日もまた孤独な自分に酔いしれられる。ああ、孤独ほど美しいものはない。今日もまた自分の城に訪問者が現れた。

 

 男はおもむろに壺を取り出し十万で買わないかと交渉をした。大正時代に日本で作られた壺らしく、花柄で綺麗で色合いもよく、時価は二十万するという。そんな金はないと言っても聞き入れてはもらえなかった。男は商売が上手かった。

「この壺は人気で見る目がある人は三十万で買うと言ってくれました。他にも、この壺が欲しくて堪らない人は大勢いらっしゃいます」

 すると男は突然、電卓で計算をし始めた。

「今あなたがこの壺を十万で買うとします。一年後にはこの坪の価値は十二パーセント上がります。これは間違いないです。十年後あなたが仮にこの壺を手放すときがくれば、この坪の価値は二十二万になります。あなたが買わないのであれば、私としては大変心苦しいのですが、他の方に今のように説明させていただき、その方に喜んで買っていただく他はありません」

 男の目には一片の迷いの表情は伺えない。どうやら男は、本当の話をしているみたいだ。

「あと、五分だけ待ちます」

 そう言い残して男は黙った。五分後、自分はこの壺を買う決断をした。

「感謝します。あなたはいい人だ。きっとこれから先、幸せが多く訪れることでしょう。壺は関係ありません。私は壺を通して、その人の価値も、壺同様に見分けられるのです。これはほんの気持ちです」

 男は一枚の皿を取り出した。

「こちらの皿はあのチェンツル王国で作られたと言われています。こちらの皿も、あなたが先程買われた壺同様に、また大変に価値のある品物です。私はこの皿を譲り上げられる方をずっと探しておりました。あなたに出会えてよかった。お金はいただきません。先程も申し上げた通り、ほんの気持ちなのですから」

 アカシアのような木に見えるその皿は、確かにチェンツル王国で作られた皿のように見えた。

「最後になりますが、ここはとてもいい所です。壺の状態も気になりますし、できればまたこの城へ定期的に訪れてもよいでしょうか?」

 自分は一人になりたくてこの城に住んでいるのだから、要らぬ訪問者はできれば避けたい案件だった。しかし、この男は信じられる。自分は許可をした。去っていく男の背中を見て、自分が買った壺は確かに価値のある壺であると確信できた。そう男の背中が、語っていたように見えたからだ。

 次の日。再び男は現れた。